新しいMobility CULTUREを作る
- DRIVETHRU DIRECTOR: SHOGO JIMBO -
国内外から注目を集めるオンラインモーターマガジン「DRIVETHRU」
これまでの自動車情報だけを取り上げたモーターマガジンではなく、自動車にファッション、アートを組み合わせた、モーターカルチャーマガジンである。同誌は広告費に頼らず、スポンサーやタイアップ企業へのクリエイティブワークや、ブランディングプロジェクトを通して、成り立っている。それがマスに迎合しない、目の前の読者を熱狂させる、エッジの立ったプロジェクトにつながっているとba2は考えている。ディレクターの神保氏に話をうかがった。
なぜDRIVETHRUを始めたのか
「2014年12月に、DRIVETHRU(ドライブスルー)を始めました。Web Magazineならどこでも読めるし、印刷代もかからない。当時の自分と同世代が読みたいと思う、車とファッションやアートを掛け合わせたようなカルチャーマガジンがなかったので、作りました。」
ごく自然のことのように語る神保氏だが、独自の視点で編集されたコンテンツが、世界中にファンをもち、DRIVETHRU に影響を受けた次の世代が、第二、第三のオンラインモーターマガジンを登場させている。 DRIVETHRUをドライブスルー足らしめている特徴として、広告収入に頼らない独自のビジネスモデルだろう。言うは易しだが、メディア運営をしたことがある方なら、それはそう容易くないことは想像できるだろう。収入源となるタイアップ企画やブランディングプロジェクトを常に成功させなければいけないプレッシャーに、神保氏はクリエイターとしてどのように向き合っているのだろうか。
誰か一人を感動させる企画作り
「果たして本当に誰かに読まれるのか、常に公開前は不安になります。ですが、 イメージした想定読者の誰か一人でも感動させられたらと思って、企画、実行しています。結果として、それが過去のプロジェクトではうまくいって、クライアントがピンポイントで指名してくる好循環になっています」。
解像度高く設定した想定読者一人を意識することが、結果として、ありふれたコンテンツからの差別化につながり、こうして私たちのように熱狂したファンを産むのだろう。
手ごたえを感じた「限界号」プロジェクト
神保氏とは、表参道のCommune 2nd※を拠点に神保氏がDRIVETHRUのプロジェクトを展示する際に知り合った。
※[Commune 2ndとは]メディアサーフコミュニケーションズが、表参道の遊休地をコミュニティ型商業施設として運営し、感度の高い人たちが国内外から集まるカルチャーの発信地。残念ながら、2021年役目を終える。
Commune 2ndに、DRIVETHRU の企画で「生け花×自動車」のコンセプトで作られた「限界号」が展示されたのだった。コンパクトバンの屋根に巨大な造形物が載る強烈なインパクトで、世界中に拡散された。
「限界号を出したときに車に興味ない人にも、車ってかっこいいと思ってもらえたのは手ごたえを感じました。車×アート×ファッションなど垣根を超えたものなので、多くの方から反響をもらえました。」
こちらの動画を見てほしい。今見ても唯一無二のクリエイティビティを感じる「限界号」の映像だ。
"ターゲットを明確にし、面白いと思うものしかやらない"
ヴィンテージなスーパーカブレースプロジェクト、B.O.B.L
DRIVETHRUのユニークなメンバーでチームを結成して参戦中の、60年代のヴィンテージ スーパーカブのレースイベント、B.O.B.L (Battle Of Bottom Link) である。
「誰にでもなじみのあるホンダ・スーパーカブの企画なら、日本独自のコンテンツとしても成立し、かつ多くの方に楽しんでもらえると思いました。スピードがそんなにでない中で、レースというプリミティブな乗り物の楽しさを、一度でも味わったら、誰しも虜になりますし、発信し甲斐があります。」
未だに2輪の免許すらもっていない神保氏自身だが、“BOBLへの道”と題し、あの手この手とチーム一丸となってレースへ挑むロードレースストーリーと、ヴィンテージな雰囲気のビジュアルに、私たちも虜だ。 これからもDRIVETHRUの展開に目が離せない。
気取らないラグジュアリー
「スニーカーだと、ナイキなんかのコーディネートが多い中で、主張しすぎないラグジュアリースニーカーは、いいポジショニングだと思います。ハイブランドだと目立ちすぎてしまうことがあるので。でも、いいものは履きたいですよね。」
また、DRIVETHRUで取材するなかで、ラグジュアリーの概念や変化が生じているのを感じるという。
「90年代のクラシックなメルセデスベンツ をその当時、不人気だった純正色のプロブエベージュに目をつけたのは、ハイブランドのファッションシーンがストリートを求める方向性に着目したものでした。カスタムを施した『アローズ』社のメルセデスベンツは今も非常に好評です。これまでのステータスシンボルとしてのメルセデスを選ぶラグジュアリーの客層とはまったく異なりました」
相棒は「7万円で購入したBMW E21」
DRIVETHRUではチャンレンジングなことしかしないという神保氏にとっても、特にチャレンジングなのが、こちらのEVコンバート(電気自動車のモーターを載せる)プロジェクトだ。すでに3年がプロジェクト開始から経過している。デッドラインは敢えて設けないという神保氏の言葉から、様々な覚悟を感じた。
「学生時代に中古車屋でバイトしていた時に、このE21型 (1979年)のBMW 320iのフロントノーズの逆スラントに一目ぼれしました。ずっと探していたら運よく下取りが出たので、7万円で購入し、それから10年以上地元で場所を転々としながら保管していました。古い車なので、学生時代に乗っていた時でもパーツが無いことが多かったので、いずれは新車のBMWのエンジンでも載せれないかと考えていました。
動力機関として、モーターをコンバートをしているので、ガソリンは使わずに、電気で走る。古い車ならではの燃費や排気ガス規制も気にする必要はない。
ちょっと乗ってみますか?
神保氏が我々ba2チームを気さくに誘ってくれた。
「ヒューン」という、エンジン音とは違うモーター音が、アクセルを加速すると鳴り響く。
驚くことに、なんとこちらの電気自動車は、MT(マニュアルトランスミッション)。電気自動車ではオートマしかないと信じ込んでいた私たちにとって大きなサプライズであった。モーターならではの素早いレスポンスと、MTのシフトによる操作感が相まって、確実に運転して楽しい。 1970年代のシンプルな自動車の楽しさと、最新鋭のEVの力が融合した、素晴らしいモビリティに仕上がりつつあることが感じられた。
今後も益々DRIVETHRUの展開に目が離せない。