新しいMobility Culture を作る - DRIVETHRU DIRECTOR: SHOGO JIMBO ba2

新しいMobility Culture を作る - DRIVETHRU DIRECTOR: SHOGO JIMBO

国内外から注目を集めるオンラインモーターマガジン「DRIVETHRU」。これまでの自動車情報だけを取り上げたモーターマガジンではなく、自動車にファッション、アートを組み合わせた、モーターカルチャーマガジンである。同誌は広告費に頼らず、スポンサーやタイアップ企業へのクリエイティブワークや、ブランディングプロジェクトを通して、成り立っている。それがマスに迎合しない、目の前の読者を熱狂させる、エッジの立ったプロジェクトにつながっているとba2は考えている。ディレクターの神保氏に話をうかがった。

 

■「誰か一人を感動させる」企画作り

 

 「2014年2月に、Drivethruを始めました。Web Magazineならどこでも買えるし、印刷代もかからない。当時の自分と同世代が読みたいと思う、車とファッションやアートを掛け合わせたようなカルチャーマガジンがなかったので、作りました。」

ごく自然のことのように語る神保氏だが、独自の視点で編集されたコンテンツが、世界中にファンをもち、Drivethru に影響を受けた次の世代が、第二、第三のオンラインモーターマガジンを登場させている。

 DrivethruをDrivethru足らしめている特徴として、広告収入に頼らない独自のビジネスモデルだろう。言うは易しだが、メディア運営をしたことがある方なら、それはそう容易くないことは想像できるだろう。収入源となるタイアップ企画やブランディングプロジェクトを常に成功させなければいけないプレッシャーに、神保氏はクリエイターとしてどのように向き合っているのだろうか。

「果たして、本当に誰かに読まれるのか、常に公開前は不安になります。ですが、 イメージした想定読者の誰か一人でも感動させられたらと思って、企画、実行しています。結果として、それが過去のプロジェクトではうまくいって、クライアントがピンポイントで指名してくる好循環になっています」。

解像度高く設定した想定読者一人を意識することが、結果として、ありふれたコンテンツからの差別化につながり、こうして私たちのように熱狂したファンを産むのだろう。


■手ごたえを感じた「限界号プロジェクト」

神保氏とは、表参道のCommune 2nd※を拠点に神保氏がDrivethruのプロジェクトを展示する際に知り合った。
※メディアサーフコミュニケーションズが、表参道の遊休地をコミュニティ型商業施設として運営し、感度の高い人たちが国内外から集まるカルチャーの発信地であった。残念ながら、2021年役目を終える。

Commune 2ndに、Drivethru の企画で「生け花×自動車」のコンセプトで作られた「限界号」が展示されたのだった。コンパクトバンの屋根に巨大な造形物が載る強烈なインパクトで、世界中に拡散された。

「限界号を出したときに車に興味ない人にも、車ってかっこいいと思ってもらえたのは手ごたえを感じました。車×アート×ファッションなど垣根を超えたものなので、多くの方から反響をもらえました。」

こちらの動画を見てほしい。今見ても唯一無二のクリエイティビティを感じる「限界号」の映像だ。

  

 

■企画のスイートスポットの見つけ方「ターゲットを明確にし、面白いと思うものしかやらない。」

Drivethruでは、近年力を入れているのは、オートバイのスーパーカブのレースイベント、B.O.B.L (Battle Of Bottom Link) である。

 

「誰にでもなじみのあるカブの企画なら、日本独自のコンテンツとしても成立し、かつ多くの方に楽しんでもらえると思いました。スピードがそんなにでないプリミティブな乗り物を載るからこそ楽しいですよ。」

2輪の免許すらもっていなかった神保氏自身が、“BOBLへの道”と題し、あの手この手とチーム一丸となってレースへ挑むロードレースストーリーと、ヴィンテージな雰囲気のビジュアルに、私たちも虜だ。これからもDrivethruの展開に目が離せない。

 

 

■ 気取らないラグジュアリー

 「私の周りでも、ロレックスからアップルウォッチに変えた人も増えているし、ラグジュアリーの概念が変わってきていると思う。」

Drivethru でも、ポルシェなどの高級車を、クリエイタ―が自身の世界観を落とし込み、実際にプライベートカーとして使用するアメリカでのシーンを取り上げた。

「スニーカーだと、ナイキとかアディダスのスタンスミスのコーディネートが多い中で、主張しすぎないラグジュアリースニーカーは、いいポジショニングだと思います。  今後の展開に期待ですね」

■相棒は「5万円で購入したBMW 318i」 

Drivethruではチャンレンジングなことしかしないという神保氏にとっても、特にチャレンジングなのが、こちらのEVコンバート(電気自動車のモーターを載せる)プロジェクトだ。すでに3年がプロジェクト開始から経過している。

その大規模プロジェクトに採用されたのが、神保氏にとってとりわけ思い入れが深い、E21型 (1980年代前半)のBMW 318だった。

「学生時代に中古車屋でバイトしていた時に、知り合い経由で5万円で購入しました。フロントノーズの逆スラントに一目ぼれして。。それから10年以上地元で保管していました。古い車なので、流石にパーツなどが無くなってあきらめていた時に、タイアップ企画でEVコンバート(電気自動車のモーターを載せる)の話がきました。」
EVという新しい技術を使いながらも、ホイールなどはわざとオリジナルのままにして、いい味がでている。

 

 

こちらはEVコンバートをしているので、ガソリンは使わずに、電気で走る。古い車ならではの燃費も、排気ガス規制も気にする必要はない。


「ちょっと乗ってみますか?」と神保氏が我々ba2チームを気さくに誘ってくれた。「ヒューン」という、エンジン音とは違うモーター音が、アクセルを加速すると鳴り響く。我々がなにより、びっくりしたのが、なんとこちらのEVは、MT(マニュアルトランスミッション)なのだった。
電気自動車ならではのレスポンスと、MTのシフトが相まって、これは確実に楽しい。


1980年代のプリミティブな自動車の楽しさと、最新鋭のEVの力が融合した、素晴らしいプロジェクトであった。

また、ひとつ素晴らしいモビリティに出会えて、豊かな気持ちになれたba2チームであった。